桐堂葉市(とうどうよういち)/「私」 小説家。『甘味百景』は基本的に、「彼が新聞に連載しているエッセイ」というていで書かれている。 主に怪奇小説、幻想小説を書いていて、作品は短編が多め。 文体や世界観に根強いファンがいるが、そのせいかファンの拗らせ率が高い。 甘いもの、旨いものが好き。また美人と変人が好き。 編集者のS君とは中学からの仲である。 『桐堂葉市』はペンネームで、本名は蔵未孝一(くらみこういち)。数少ない作家仲間からは、大抵ペンネームで呼ばれている。

沢霧章吾(さわぎりしょうご)/「S君」 「——社」の編集者。葉市の担当編集で、実はこの連載の担当も彼。 父が軍の要職で、伝手がある。病弱な双子の兄が居り、身近な人間の安否に関してやや心配性。 見る者の血が凍るような常軌を逸した美貌だが、性格は至って普通。 葉市とは中学からの仲である。葉市には気のつかない男のように書かれているが、まあまあ全部わかっている。

三青俊(みあおしゅん)/「三青君」 桐堂宅の書生。呉服屋の長男で、黒髪の美青年。 はっとするほど青い目を持っており、それで驚かれるのが面倒なために伊達眼鏡で誤魔化している。 父親譲りの涼やかな顔立ちにまるで似合わぬ図太い神経の持ち主。 葉市のファンなのは本当で、本人も忘れているような著作も全て読んでいる。だが俊自身が書いているのは俳句。 英海軍に親友がいるらしい。理由は不明だが、英語に堪能。

松倉千夜(まつくらちよ)/「チヨ」 桐堂宅の小間使い。万事に完璧だが、味噌汁だけちょっと味が濃い。 おはぎが好きで、古風な性格。